意外と知らない猫のフィラリア症

『フィラリア症』と聞くとわんちゃんを思い浮かべる人が多いと思いますが、最近ではねこちゃんへの感染も多いことが知られてきています。感染してしまうと死に至る可能性もあるとてもこわい病気ですが、定期的な予防で防ぐことができますので、是非参考にしていただければと思います。

①フィラリア症について
 犬糸状虫というフィラリアの一種である寄生虫による疾患のことを、フィラリア症と呼びます。
 フィラリアは蚊を中間宿主にしてわんちゃんやねこちゃんの筋肉や皮下組織に入り込み、2〜3ヶ月程成長した後に血管内に入り込み、感染から100日程の時間をかけて成虫になります。成虫になると全長15〜30cmにもなり、これが血流に乗って心臓や肺動脈にたどり着きます。感染から6〜9ヶ月後にはフィラリアはミクロフィラリアを産みはじめて、どんどん増えていくことになります。成虫まで成長できるフィラリアはわんちゃんよりねこちゃんの方が少ないのですが、それでも3〜10%のフィラリアは成虫まで成長してしまいます。その中で心臓や肺動脈にまで到着できるフィラリアはわんちゃんで1頭あたり1〜250匹、ねこちゃんでは6匹未満くらいです。わんちゃんに感染したフィラリアの寿命は7年以上、ねこちゃんに感染したフィラリアでも2〜4年は生きることが知られています。わんちゃんに対してねこちゃんの方が心臓や肺動脈に寄生する量や期間が少ないので一見大丈夫かと思ってしまいがちですが、ねこちゃんの10頭に1頭が感染していること、ねこちゃんの突然死の10%がフィラリア症が原因であると言われていることを考えると、安心はできません。

②症状・治療法
 わんちゃんの場合は心臓や肺動脈に虫が詰まるので、咳、心臓発作、腹水の貯留などの特徴的な症状がみられますが、ねこちゃんの場合は咳、呼吸困難、嘔吐、元気消失、体重減少などはっきりとした症状がみられない場合が多いです。他の病気と見分けがつかず、わんちゃんと違って寄生している数が少ないために検査をしても検出できない場合が多くあるので、原因のわからないまま突然死を迎えることがとても多い病気です。
 わんちゃんの場合は駆虫薬を使用したり手術で体内の寄生虫を摘出したりするのですが、ねこちゃんの場合はそうはいきません。フィラリアが寄生しているねこちゃんに駆虫薬を投与すると、体内の成虫が死滅することによって強い免疫反応が起きてねこちゃんの命に関わることがあります。手術に関しても麻酔に耐えられなかったり、心臓が小さいために手術もかなり負担がかかってしまうなど、ねこちゃんのフィラリア症は治療方法が確立していないのが現状です。ですからフィラリア症に感染してしまったら炎症を抑えるための対処療法をしつつ、フィラリアの予防薬を投与してこれ以上感染しないようにしていくことが必要になります。

 とてもこわいフィラリア症ですが、しっかり毎月予防をすることで防ぐことができます。蚊除けなどの防虫グッズでは予防できませんので、動物病院専売のねこちゃん専用フィラリア予防薬を毎月投与していく必要があります。背中の皮膚に液状の薬を滴下するだけなのでご自宅でも簡単にできますし、上手くできるか心配な方は病院に連れてきていただいても大丈夫です。
 予防期間は愛知県では5〜12月の間で推奨されていますが、フィラリアは14℃以上あれば寄生して成長していくことができでしまうので、室内が温かいなど心配な要素があるのであれば1年中予防していただく方が安心かもしれません。実際、愛知県より気温の高い沖縄県では年間を通しての予防が必要とされています。
 なってしまってからでは治療の難しいフィラリア症ですが、毎月1回の予防だけで大切なねこちゃんがフィラリア症にかかってしまうリスクをなくせるので、「うちの子は大丈夫」と思わすに定期的な予防をしてあげることをおすすめします。