2024/10/15
高齢になり、慢性腎臓病等の病気にかかると食欲不振や体重減少といった症状が現れます。
高齢ネコちゃんの体重減少は、生存期間が短くなる恐れもあるので注意が必要です。
今回は食欲増進効果+代謝変化が得られる「エルーラ」というお薬についての紹介です。
目次
エルーラとは
効果・安全性
使用方法
使用上の注意点
他の食欲増進剤との違い
まとめ
エルーラとは
エルーラとは、腎臓病等の慢性疾患の進行に伴う食欲不振や体重減少の改善し、食欲増進+代謝変化の2つにアプローチすることが目的です
・食欲増進
エルーラの主成分であるカプロモレリンは、体内で分泌されるグレリン(空腹ホルモン)と似た働きをする成分が配合されています。
服用することでグレリン受容体が結合し、空腹感を感じさせ食欲を増進させます。
またグレリンは筋肉量を増加させる作用もあります。
・代謝変化
代謝はネコちゃんの体重と健康状態に大きな影響を与えます。
グレリンは、成長ホルモンの分泌を促進し、代謝の調整や体重の維持に重要な役割を果たします。
成長ホルモンは、筋肉や骨の成長をサポートし代謝を高める役割を持っており、筋肉の成長や維持に役立ち、体重減少や筋肉萎縮が進行している状況でも筋肉量を保つために役立つと言われています。
効果・安全性
・食欲増進
投与を開始し、ネコちゃんの食欲が改善し、体重の減少を抑える結果がでました。
・体重増加、維持
投与開始後80%のネコちゃんに体重の持続的な増加、維持が認められました。
・生活の質の向上
エルーラは、
体重減少は、体力・免疫機能・創傷治癒にも悪影響を与え、生存期間が短くなる恐れがあります。
それらを防ぐには「食欲増進」や「代謝異常改善」が必要になってくるのですが、エルーラはこれらの問題に作用し体重維持・増加をすることで、体重減少に悩むネコちゃんのQOLを向上することが可能です。
・安全性
長期投与のお薬は体への影響も気になりますが、臨床試験および安全試験においてネコちゃんに対する安全性が確認されているため、長期投与の心配もいりません。
使用方法
・1日1回経口投与
エルーラは1日1回、体重1kgあたり0.1mlを経口投与します(バニラフレーバー)
すぐに効果が現れるのではなく、徐々に食欲が改善していくため数日~数週間の使用をオススメします。
(個体差があるため、すべてのネコちゃんに同じ効果が出るわけではありません)
使用上の注意点
エルーラの副作用は軽度ですが、下記のような副作用が報告されています。
・よだれ
試験中に20%のネコちゃんに投与直後よだれが出ることが確認されましたが、数分で症状も収まりました。
薬の苦みや気持ち悪さからくる症状ではなく、作用機序の関係でよだれが出るようなので大きな心配は必要ないそうです。
・血糖値上昇
血糖値上昇も、作用機序の関係で一時的な血糖値上昇が認められらそうです。
血糖値上昇は次第に減少し、最終的にほとんどみられなくなるようで大きな心配はないそうです。
・嘔吐、下痢
投与後に嘔吐・下痢等の消化器症状がみられることがありますが、一時的なものであれば問題ありません。
症状が続く場合や悪化する場合は、獣医師にご相談ください。
また妊娠中・授乳中のネコちゃんには使用できない場合があります。
他の食欲増進剤との違い
これまで食欲増進剤として、「ミルタザピン」が多く用いられてきました。
ミルタザピンは耳に塗布すると、使用数十分で食欲増進効果のみが得られます。
エルーラは効果が出るまでに数日~数週間かかりますが、食欲増進効果に加え代謝改善も行ってくれ、筋肉量の増加も期待できるため長期投与する方にオススメです。
まとめ
エルーラは食欲増進効果や体重減少を防ぐためのお薬です、慢性腎臓病そのものの進行を抑える薬ではないので、エルーラの使用によって食欲が回復した場合でも、腎臓に配慮した食事を継続することが必要です。
またエルーラを使用する時は、定期的な血液検査等を行いながら、獣医師の診断と指導に基づいて使用しましょう。